• 2017.03.28

かっこいいショールームはないけれど、モノづくりの現場はここにあります。森とつくり手が見える工場から生まれるものとは。

「すいません、ちょっとお尋ねしたいのですが」

とある日、みんなの材木屋に一本の電話がかかってきました。広島県にお住まいの女性からの電話でした。

 

「インターネットで注文してサンプルを送ってもらったんですけど、実際にどんな商品か実物を見せてもらいたいんです」とのこと。

 

女性がお住いの広島から西粟倉村までは車で3時間。決して近い距離とはいえません。平日のお昼にも関わらず、わざわざ足を運んで商品を見てみたいといってくださったことが嬉しくて、少しだけ工場を案内させていただきました。

 

かっこいいショールームはないけれど、ものづくりの現場があります。

小さなサンプルの板を見ただけでは、材木の質感は感じられても床に貼られたフローリング全体の雰囲気を掴むのは難しいでしょう。大工さんたちがきれいに納めた施工写真を見るだけでは、自分が床を張り替えるイメージは持ちづらいと思います。

 

想像していた商品と違ったらどうしよう、自分で挑戦して失敗したらどうしよう、考えれば考えるほど不安も積み重なります。安いものではありませんし、はじめてのことに挑戦するって勇気がいるものです。

 

トランスフォーマーのような製材機が丸太を“食べる”様子は迫力満点

 

『みんなの材木屋』の工場は岡山県の西粟倉村という小さな村にあります。人口1,500人、森林率95%を越える中山間地域。村内に信号機は2つしかありませんし、コンビニもありません。雪が多い田舎なのでスタッドレスタイヤは必須アイテム。東京からは新幹線を使って5時間近くもかかります。

 

そして、『みんなの材木屋』は小さな会社なのでかっこいいショールームはありません。 決してきらびやかではないけれど、山に囲まれた工場で、山から伐り出された木を使い、一枚一枚のフローリングをつくり続けるものづくりの現場があります。手を動かし汗を流すつくり手の顔を見ることのできる場所です。

 

仕上げの工程は女性スタッフが行います。

 

「この丸太は何年くらい育ったものか分かりますか?」 「あの工程は何をやっていると思いますか?」

 

工場を案内する中でお客さんに質問を投げかけることがあります。わざわざ田舎の小さな工場に足を運んでくださったお客さんには少しでも多く木のことを知ってほしいから。

 

「こんなに手間のかかる作業だなんて知りませんでした」 「実際につくっている現場を見せてもらえたので安心して使えます」 と嬉しいコメントをいただけることも多く、材木屋冥利につきます。

 

お客さんの手元に届くまでに傷つくことがないように丁寧に梱包します。

 

今回お越しいただいた広島の女性は、息子さんと一緒に工場まで足を運んでくださいました。春からUターンして広島に戻ってくる息子さんの部屋を家族総出で改装するんだそう。

 

「はじめてなので不安も多いですが、工場を見て安心したし、床を張るのが楽しみになりました」 「床がうまくできたら、次は壁にチャレンジします」 そうおっしゃっては広島に戻っていきました。車の後部座席にはフローリングをどっさり積んで。ありがとうございました!

 

『みんなの材木屋』は田舎の小さな材木屋。まだかっこいいショールームはありません。けれど、森とつくり手の顔が見えるモノづくりの現場だからこそお客さんに感じていただけることはたくさんあります。

 

お客さんに工場を見てもらって何かを知ってもらったり、喜んでもらったり、面白がってもらったりすることが、木や森に対する理解に確実につながっていきます。ここは不便な田舎かもしれないけれど、西粟倉村までわざわざ足を運んでくださるお客さんが満足する工場でありたいなと思ったのでした。

 

テレビ取材の様子。

 

僕は工場案内の仕事が大好きです。だからいつも張り切ってしまうのだけれど、製造の女性スタッフからはたまにこんなことをいわれたりもします。

 

「テレビ取材があるなら前日に教えてくれないと!女はそれなりに準備があるんだからね」って。 あら、女性の身だしなみも、現場にはとても大切だったのでした。

 

文:ハダッチ

 

 
三重大学を卒業後、国産材専門の木材商社を経て、西粟倉村へ移住。新たな木材流通をつくるためプロユースの営業を担当。山を走り回ったり、狩猟をしたり、DIYに勤しんでいます。
個人ブログも書いてます → http://hadatomohiro.com/