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よみもの

  • 2018.04.27

森に寄り添う建築とは何か?設計ありきで木材を用意するのではなく、村の森林構成ありきで設計した「西粟倉保育園」が完成!

 

2018年3月、西粟倉村に新たな保育園が完成しました。

西粟倉の木をたっぷり使った、西粟倉の子どもたちのための木造保育園舎です。

 

外部でも塗装をし過ぎることなく、木の経年変化を感じられる設計

 

西粟倉保育園の特徴は、木がたっぷり使われたあたたかみのある雰囲気の裏にある設計プロセスにこそあります。

 

本来の建築ならば、設計ありきで施工する木材を用意するのが当たり前。

「構造設計上、ここは大きめの梁を」

「意匠的には化粧性の高い天井板を」といった具合に。

 

ところが西粟倉保育園は、地域(村)の森林構成をはじめ

「どこの山に、どんな木が生えているか、どんなサイズの木材に加工できるか」

を考慮し設計していることが大きな特徴です。

 

 

床全面に床暖房対応のフローリング(ひのき)が施工されています

 

世代を越えて守り育てられてきた木を目一杯使い、村の子どもたちを育む園舎をつくるために、どんな建物であるべきなのか。

それを考え続けた結果が「森に寄り添う建築」をつくることだったのでした。

 

森林大国ニッポンにおいて、ただ木をたくさん使えば良いというわけではなく、本当の意味での「森に寄り添う建築」とは何なのかを考えるきっかけになるプロジェクト。

それが人口1500人、森林率95%の西粟倉村で始まったのでした。

 

西粟倉の木が目一杯使われた園舎には木の香りが漂っています

 

西粟倉保育園は村の未来を象徴する新たなランドマークです。

南北に長い西粟倉村を結ぶメインストリートの真ん中にあるので、これから西粟倉村を訪れてくださった人なら誰しも目につく建物ですよ。

 

西粟倉保育園は、

「森林の中で、未来に向う子どもたちの“きらきら”を大きく育む」

を保育理念に、村の宝である子どもたちを村全体で育んでいきます。

 

中庭を囲むように建物を設計することで、常に園舎内に日光が差し込むようになっています

 

設計は東京の設計事務所スターパイロッツによるもの。

 

「この施設で育つ子どもたちは、自然を敬い、自然から価値や恵みが取り出せる人間になってほしい」

「森と人との関わり方を環境、産業、経済といった多様な視点から自然と学んでほしい」

と村の木材はもちろんのこと、村の人材、技術、エネルギーなど、「オール西粟倉」を編集し、新しい子育ての場を計画しました。

 

 

壁面には施設のために開発された「百年の森林タイル」が施工されている

 

私たち西粟倉・森の学校は、構造材や内装・造作材をはじめ、西粟倉村産の木材を供給させていただきました。

 

世代を越えて守り育てられた村の木を、村で育つ子どもたちのために使わせていただく。

そのために、設計事務所をはじめ、西粟倉村役場、森林組合、近隣の製材工場……みなさんと何度も打ち合わせを重ねてきました。

 

構造材はもちろん、内装材や造作材にも西粟倉の木が使われています。

 

冬季は木質バイオマスによる熱エネルギーによって、夏期は敷地内に新しく掘った井戸の地下水によって空調をまかない、自然共生の自立循環型エネルギーシステムを実現しました。

建築自体が子どもたちにとって、自分たちの村の、あるいは林業の、幅広い可能性を示唆する教科書になればという思いが込められています。

 

葉っぱ型タイル「百年の森林タイル」の間には村に生息する動物たちが隠れています(イラスト:諸岡若葉

 

葉っぱ型タイルはオーダーメイドタイル屋さんTILE madeがこの施設のために開発した「百年の森林(もり)タイル」です。

他の施設で使用されるたびに、売り上げの一部が村の森林保全へ寄付されるような仕組みもつくり上げられました。

 

外部壁面には粗仕上げの木材やフローリングの端材を施工

 

樹種やサイズなど、村産材の特徴を配慮した架構を採用し、JAS認定や集成材加工など、村外への輸送がなくて済むような設計計画を立てています。

木材流通と建築設計での情報共有を徹底して実施したことが村産材比率の向上に寄与しています。

 

また、性能上問題がなくても、美観上の理由で検査ではじかれてしまう木材や、通常利用されないフローリングの端材、丸太などを積極的に用い、あえてプレーナーをかけない仕上げも採用されています。

 

園舎それぞれの屋根形状が西粟倉を囲む山々のように見える

 

こちらは夕方過ぎに撮影した写真。また違った表情を見せてくれます。

村のメインストリートから園内が覗けるので、車で通りかかっても、園内の子どもたちの楽しそうな姿を観ることができますよ。

 

 保育園の全体イメージ。中央部の中庭、右上部の外庭など、自然との境界をあえて曖昧にした設計が特徴

 

さて、今回新たに生まれた西粟倉保育園ですが、村の森づくりについては10年前の2008年まで話は遡ります。

 

西粟倉村の森林。百年生の森には下草が生え、植生が多様。陽の光が林床に注ぐ

 

西粟倉村が2008年に掲げたのは「百年の森林構想」というビジョン。

それは、50年前に子や孫のためにと木を植えた人たちの思いを伝え繋ぎ、村ぐるみで百年の森を育てて上げていくという大きな決意でした。

 

年輪を見れば、その木がどのように育ってきたのかを垣間見える

 

「百年の森林構想」を掲げた2008年から10年の歳月が流れ、現在2018年。

移住者の数は人口の1割(150人)以上にまで増え、子どもの数も増えました。昨年度は人口増加に転じました。

10年前に予想されていた人口動態から、未来が段階的に変化し、人口動態が改善されてきたのです。

 

西粟倉村の山々から切り出された木々を一本一本加工する

 

今回、建設された西粟倉保育園は、2008年に始まった50年先を見据えた村ぐるみの取り組み10年目の節目を体現するような建物となりました。

 

建築中の西粟倉保育園の様子(ドローンでの撮影)村の森と保育園がいかに近いが分かる

 

世代を越えて守り育てられてきた木を目一杯使い、村の子どもたちを育む園舎をつくる。

そのためにチーム西粟倉が見出した解が「森に寄り添う建築」だったのでした。

 

針葉樹は柔らかく温かいので小さな子どもが転んでも安心

 

これから西粟倉保育園に通う子どもたちが二十歳になり成人する頃には2038年を迎えています。

さらに、成人たちが子どもを生み、お父さんお母さんになる頃には、百年の森林構想のゴールである2058年が目前となっている頃でしょう。

 

さて、その時に、西粟倉の山々はどんな表情を見せてくれるのでしょうか。

世代を越えて伝え繋がれてきた百年生の美しい森林が笑っているはずです。

 

西粟倉・森の学校スタッフの中にも、この保育園に子どもを通わせるスタッフがいます

 

私たち西粟倉・森の学校は総勢30名弱の会社ですが、その半分以上が子どもを育てながら働くおかあさんで構成されています。

今回建設された西粟倉保育園に実際に子どもを通わせるスタッフもおり、スタッフ全員で見学をさせていただく機会をいただきました。

 

西粟倉保育園の前で、西粟倉・森の学校スタッフの記念写真

 

関東や関西のお客さまが多いため、自分たちがつくった製品がどんな空間で使われているのか分からないことも多いものです。

 

「あ〜、この材料はたいへんだったね」

「でも、こんなきれいに使ってもらって嬉しいね」

 

西粟倉保育園は、自分の子どもたちが通う保育園でもあるので、スタッフも大興奮しながら見学を楽しませていただきました。

 

森のこみち市での積み木ワークショップの様子(西粟倉・森の学校)

 

最後に、2018年4月7日に開催された完成お披露目会「森のこみち市」の様子を設計事務所スターパイロッツ&おくだいら商店が素敵な映像にしてくださいました。ぜひご覧ください。

 

西粟倉に足を運んだ際にはこの村ぐるみのプロジェクト・西粟倉保育園をご覧になってくださったら嬉しいです。

 

photo by 淺川敏

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三重大学を卒業後、国産材専門の木材商社を経て、西粟倉村へ移住。新たな木材流通をつくるためプロユースの営業を担当。山を走り回ったり、狩猟をしたり、DIYに勤しんでいます。

個人ブログも書いてます → http://hadatomohiro.com/


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