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  • 2017.03.08

材木屋に関わる人々へ捧げる、変態という褒め言葉。後編

材木と人 第一回

ココホレジャパン株式会社 ライター アサイアサミ


木は森で育ちますが「材木」としてひとびとの手に渡るまで、林業従事者、製材所や材木屋さんなど8つの会社が関わると言われています。そんな、暮らしと森の中間にいる人々のお話を伺います。第一回は「みんなの材木屋」の“編集おばさん”ライターのアサイアサミさんです。自ら「わたしは西粟倉・森の学校専属ライター」と名乗るくらい、西粟倉村や西粟倉・森の学校を数多く取材しているアサイさん。森林と暮らしのつながりの物語をどんな風に捉えているのかを綴っていただきました。


前編はこちら:材木屋にかかわる人々へ捧げる、変態という褒め言葉。前編


文・アサイアサミ

上質とは、本物に宿る。



「無垢材気持ちいい〜。うふふ〜」とはしゃぐ井上さんをみていて、ふと、昔のことを思い出しました。


東京に住んでいたとき、出産を機にマンションをリノベーションしました。少ない予算の中でどうしても譲れなかったのが床を無垢材にすること。生まれたてほやほやの息子には、木の感触を両足で踏みしめて大きくなって欲しかったのです。

2009年にリノベーションした東京の我が家。何年経っても木のいい香りがする良い家でした。

結果的に大正解。子どもは思っていたよりも床と仲良し。使い込んでいくほどに無垢材がもたらす上質さを暮らしの中で実感します。そして無垢材の床の柔らかさで子どもが転んでも怪我をしなかったこと、削れ、傷がついても味になることから張り替えの必要がないこと。


こうして無垢材の良さを知っていたわたしですが、その無垢材が「どこから来たものか」を考えたことはありませんでした。


時代の流れとともに木材の需要が急激に下がり、昭和30年代の段階的な木材輸入自由化によって、国産材は海外材との価格競争に負けて、木材の価格も下落。日本の林業は斜陽化していた背景から、国産の材木は神社仏閣などに使われる時ぐらいにしか使わないという認識でした。


高い、不毛、手がかかる、将来性が希薄な国産材は「誰も幸せにならない資源」だと思っていました。


変態たちに教えてもらった、物語の向こう側にあるもの


岡山に移住して、森林を50年後まで残そうとしている西粟倉村のことを知ります。


地域資源を活用して村おこしする。 響きは美しいけれど、それって本当にみんなが幸せになるのかしら?自己満足じゃない?揶揄してやろうと思っていました。今だからいうけど(笑)。


そこで出会ったのは、森林を愛し、林業をなんとかしようと本気で思う井上くんをはじめ、創業から会社を支えるサカポン、某大手林業会社を1年で辞めて森の学校に来た奇特な営業マン、一生懸命なリケジョ女子、現場で材木生産を支える工場長、芸大卒の絵描きなど。彼らは時に変態と呼ばれながらも、自分のやりたいことをやって、上質なものをつくりだしていました。「自分のやりたいことをやっている」っていうのがミソ。「誰かのため」は嘘くさいから(笑)。


わたしは、そのものづくりの過程が好きだと思いました。 そして、この人たちの物語がやどる「もの」を使いたいとも。



もっと良い無垢材はあるし、もっと安いものだってある。 けれど、「みんなの材木屋」が紡ぐ物語を知ってしまったわたしは、品質や高級というレッテル、価格だけでお金を払えない。上質は値段ではなく、その過程に宿ることを思い知ります。商品を使うことで用を足し、プラスアルファ日本の森につながって、それが「気持ちよい」と知ったからです。


そして、この物語は製品になって人々の手に渡して「めでたしめでたし」ではありません。物語は、使うわたしたちが暮らして引き継いでいくのです。


「めでたしめでたし」の先を保証するのが西粟倉・森の学校「みんなの材木屋」なのかもしれません。


製造部門は、物語に甘えることなく、長年暮らしを豊かにできる材木の品質を担保します。暮らし想像部は「木のある暮らし」の価値を高めるために様々な企画を立てます。そして「みんなの材木屋」は、みなさんの暮らしに少しでも森が近づくようハウツーや物語を伝えていきます。


彼らの「やりたいことの積み重ね」で、いつか国産材の流通が一般的になり、日本の森が整ったとき、そこに何があるのか見たいと願って、今日も彼らの物語をわたしは書きます。


(おわり)

「みんなの材木屋」ライター、編集、校閲などを引き受ける編集おばさん。宝島社、タワーレコードの編集者を経て、2009年フリーランスに。2012年岡山県移住。東京生まれ東京育ちが岡山そして地域というイノセントワールドにカルチャーショックを受けて、ソーシャルグッドなコトを中心に執筆しています。主なフィールドは「みんなの材木屋」「BRUTUS」(マガジンハウス)「リンネル」(宝島社)「greenz.jp」など。