よみもの

  • 2016.01.28

アルフォート1箱のキャンバスで何を伝えるか?材木屋の永遠の課題、サンプル問題

sample   材木屋の永遠の課題、と言ってもいいほど満足に解決することのできない問題があります。それはサンプル問題。   ◯ひとつとして同じ木はない 無垢のフローリングは自然素材。一本として同じものはない木を加工してフローリングをつくっているので、これもまた一枚として同じものはないのです。   色味の違い。木目の流れ。節の有り無し。節の大小。節にも生き節・死に節があったり、入り皮や葉節なんてものもあります。   木材の品質等級で言えば、無節、上小無地、上小節、小節、一等などなど。さらに色味で言えば、赤身や源平というものも。もはやなにがなにやらまったく分かりません。   ◯極めて軽微?? 日本農林規格(いわゆるJAS規格)の中には、定量的に判断できる基準があります。含水率は15%未満だったり、寸法精度は±1.0mmだったり、割れの長さの合計は材長の10%以下だったり。 逆に、欠け・きず・穴・入り皮およびヤニツボは「極めて軽微」であること、だなんて極めて定性的なものもあります。   「極めて軽微」の判断は人によって違います。それは各メーカーとお客さんとの間でも差異があるし、同じ会社のスタッフ同士でも(限りなく同じように努めるものの)差異は発生してしまいます。だからこそ、木材業は非常にクレームが多い業界でもあります。   「ウチじゃこれくらいの大きさの節だったら上小節だよ」 「いやいや!これはどう見たって小節でしょう!」 なんて等級品質の差異が発生することは日常茶飯事。それは構造材と内装材といった使用用途でも異なるため、いっそう認識のズレを大きくしています。   ◯アルフォート1箱のキャンバス だけれど、お客さんにとって床を貼り替えは決して安い買い物ではありませんし、オークションのようにノークレーム・ノーリターン!というわけにはいきません。   「みんなの材木屋」では、業者さんや一般のお客さんに毎月たくさんのサンプルをお送りしています。多い時には月に100件以上サンプルをお送りすることも。   Evernote Camera Roll 20160128 135317

ユカハリ・フローリングのサンプル(スギ・節あり・1.5cm厚)

  例えば、杉の1.5cm厚のフローリングサンプルの場合、縦横12cm×20cmのサイズにカットしたサンプルをお送りしています。   これは、みんな大好きブルボンのアルフォートの一回り程度大きなサイズ。このアルフォート1箱サイズに「無垢」を伝えることが非常に難しいんです。   そのサンプル一枚一枚に「無垢」をお客さんにしっかりと伝えられているのか?と問われれば、胸を張って首を縦に振ることができないのが正直な気持ち。   だからこそ、もっともっと木の風合いや魅力を伝えられるような「みんなの材木屋」でありたい、と強く思っています。   Evernote Camera Roll 20160128 135316

スギ 左:白身、右:赤身

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スギ 左:白身、右:赤身

例えば、上の2枚の写真は、どちらも同じサイズのスギのサンプルです。白身と赤身ではこんなにも色が違います。 スギの場合、皮に近い辺材は白身がち、芯に近い芯材は赤身がちになります。   Evernote Camera Roll 20160128 135313

ヒノキ 左:埋め木処理、右:小さな節穴

  節の違いについてもそう。こちらはヒノキの写真。 左は埋め木処理をしたもの。フローリングに穴を空けて埋め木を打ち込んでいます。 右は小さな節穴にパテ埋めを施したものです。   Evernote Camera Roll 20160128 135315 Evernote Camera Roll 20160128 135314

ヒノキ 節にもさまざまな表情があります

  他にも、こんな表情のある節も。こういった節もパテ埋めなどの処理をして、凹凸が小さくなるようになめらかに加工します。   製造所のスタッフのみんなは、 「赤ちゃんがハイハイしても怪我をしないように」 「ストッキングを履いた女性が伝線しないように」 と、工場内の温度が氷点下になるような寒い日でも指先の感覚を大事にして、一枚一枚を手作業で仕上げてくれています。   枝がない木はありません。だから、節があるのは当たり前。 だけど、「自然のモノなんだから当たり前だよ!」と言うのではなくて、無垢という素材を誤解のないようにお客さんに選んでもらえるように、サンプル一枚だってこだわりたい。そう考えています。   たしかに工業製品と違って、扱いにくい素材なのかもしれません。 色味や木目、節の有り無しなどの表情だけではなく、割れたり曲がったり反れたりもする。 木と向き合うことをやめてしまえば、それ以上でもそれ以下でもありません。使いにくい素材、で終わり。   木にはアルフォート1箱のサイズにはとうてい収まりきらないさまざまな表情があります。 その豊かさをもっと多くのひとに伝えられるように、「みんなの材木屋」は生まれました。   だからこそ、いろんなひとに木を使ってもらうために、木の心地よさを感じてもらえるようにもっともっと工夫していきたいと思っています。

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三重大学を卒業後、国産材専門の木材商社を経て、西粟倉村へ移住。新たな木材流通をつくるためプロユースの営業を担当。山を走り回ったり、狩猟をしたり、DIYに勤しんでいます。

個人ブログも書いてます → http://hadatomohiro.com/